
タイでの転職が決まると、多くの人がまず気にするのは「額面の給与」でしょう。
しかし、実際に生活していく上で大事なのは、そこから税金や社会保険料が引かれたあとの手取り額です。
特に、タイの手取りは日本と仕組みが異なります。日本とタイでは給与から差し引かれる税金や社会保険料の仕組みがかなり違うため、日本の感覚のままタイの手取り額を計算すると、実際に受け取れる金額を見誤る可能性があります。
この記事では、タイで働く日本人向けに、タイの手取り額がどのように決まるのか、給与から何が引かれるのかをわかりやすく整理します。額面給与だけでなく、実際の手取り給与を把握することで、タイでの生活費や転職後の収入を具体的にイメージしてみましょう。
タイで働く場合、いくらの手取りが残るのか?――額面給与だけでは分からない、実際のタイの手取りを確認していきます。
💡重要なポイント
- タイは社会保険料に上限があり、一定以上の給与では負担額が増えないため、手取り額にも影響します
- 日本の住民税に相当する地方税がなく、給与からの控除や手取りの仕組みが日本とは異なる
- 所得税は5~35%の累進課税で、所得や各種控除によって手取り額が変わる
- 同じ額面給与でも、個人の条件や会社の制度によって、実際に受け取れる手取り給与は異なる
- タイで働く際は、額面給与だけでなく、手取り額や生活費、手取りと支出のバランスまで含めて確認することが重要
目次
額面と手取りの違い
求人票や給与明細を見る際によく目にする「額面」と「手取り」ですが、この2つは意味が異なります。給与を正しく理解するためには、それぞれの違いを知っておくことが大切です。
+
各種手当
+
社会保険料
受け取る金額
額面とは
額面とは、基本給に残業手当や役職手当、通勤手当などの各種手当を含めた、控除前の給与総額を指します。
給与明細では「総支給額」と表記されることが多く、求人票に記載されている給与額も、基本的にはこの額面給与です。
手取りとは
手取りとは、額面給与から所得税や住民税(日本の場合)、社会保険料などを差し引いた後、実際に銀行口座へ振り込まれる金額のことです。
給与明細では「差引支給額」や「支給額」などと記載されることもあります。
そのため、同じ額面給与であっても、扶養家族の有無や社会保険料、税金などの条件によって控除額が異なり、実際の手取り額には個人差があります。
特にタイへの転職を検討する場合は、タイの手取りがいくらになるのかを事前に確認することが重要です。求人票に記載されている給与額だけを見るのではなく、税金や社会保険料などを差し引いた後に、実際に受け取れる手取り給与がいくらになるのかを把握しておきましょう。
タイの手取りの控除内訳
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 社会保険料 | 給与の5%(上限875THB/月) |
| 所得税 | 課税所得に応じて5~35%(累進課税) |
| その他控除(会社制度による) | 企業制度により異なる ・Provident Fund(退職積立制度):給与の2~15%程度 ・団体保険料、社員ローン返済、福利厚生関連費用など |
社会保険料
タイでは、一定の条件を満たす従業員は社会保険(Social Security)への加入が義務付けられています。
社会保険料は給与の5%ですが、従業員負担には上限が設けられており、2026年現在は月額875THB(17,500THBが上限)となっています。
つまり、17,500THBを超える場合でも、社会保険料は875THB以上増えることはありません。そのため、タイで働く場合は、給与が上がっても社会保険料による手取り額への影響が比較的小さいことが特徴です。
日本人の現地採用者は、新卒・未経験者であっても月給50,000THB前後からスタートする求人が多く、ほとんどのケースで社会保険料は上限額の875THBとなります。
また、社会保険に加入すると、指定病院での医療費補助をはじめ、歯科治療補助、出産手当、育児手当、傷病手当、失業給付、老齢年金など、幅広い社会保障を受けることができます。
所得税
所得税は給与額そのものに対して計算されるのではなく、年間所得から給与所得控除や各種控除を差し引いた「課税所得」をもとに算出されます。
タイの所得税も日本と同様に累進課税制度を採用しており、課税所得の金額に応じて5~35%の税率が段階的に適用されます。
そのため、タイで働く際の手取り額を知るには、額面給与だけでなく、社会保険料と所得税を考慮することが重要です。特に日本とタイで給与を比較する場合は、「額面給与」ではなく「手取り」で比較することで、実際に受け取れる金額の違いが分かりやすくなります。
※1THB=4.8JPY
※日本円は 1THB=4.8JPY で換算した参考値です。為替レートにより実際の金額は変動します。
また、多くの企業では毎月の給与支払い時に所得税を源泉徴収し、従業員に代わって納税手続きを行っています。そのため、従業員が毎月受け取る給与(銀行口座への振込額)は、社会保険料や所得税などが差し引かれた「手取り(Net Salary)」となります。
その他控除(会社制度による)
会社によっては、社会保険料や所得税以外にも追加の控除が発生する場合があります。
代表的なものとして、プロビデントファンド(Provident Fund/退職積立制度)があります。これは会社が制度を導入している場合に加入できる任意制度で、従業員が給与の一部(一般的に2~15%程度)を積み立てると、会社も一定割合を拠出する仕組みです。
積立金は運用され、退職時に受け取ることができます。また、会社拠出分は勤続年数などの条件によって受取割合が決まる場合があり、長期勤務を促す福利厚生制度の一つとなっています。
その他にも、会社によっては以下のような控除が発生する場合があります。
ただし、これらの控除はすべての企業で適用されるものではなく、勤務先の制度や契約内容によって異なります。
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タイと日本の手取り額の違い
給与額・年齢・加入する健康保険組合などにより変動。
2026年現在、上限は875THB/月。
17,500THB以上は保険料が増えない。
社会保険料の違い
タイと日本では、社会保険料の仕組みが大きく異なります。タイで働く場合の手取りを考えるうえでも、社会保険料の違いは重要なポイントです。
タイでは、従業員が負担する社会保険料は給与の5%ですが、2026年現在は月額875THBが上限となっています。そのため、給与が17,500THBを超える場合は、それ以上給与が上がっても社会保険料は増えません。
一方、日本では健康保険・厚生年金・雇用保険などを合わせた本人負担がおよそ14〜15%となっており、給与額や年齢、加入する健康保険組合などによって保険料が変動します。
そのため、同じ額面給与でも、社会保険料の負担額によって手取り額に差が生じる場合があります。特に給与が高くなるほど、タイでは社会保険料の上限があるため、手取りの割合が相対的に高くなる傾向があります。
住民税の違い
タイには、日本の住民税に相当する地方税はありません。そのため、給与所得者の場合、給与から差し引かれる主な税金は所得税となります。
住民税がないことも、タイで働く場合の手取り額を考えるうえで、日本との大きな違いの一つです。 社会保険料と税金の仕組みを理解することで、タイと日本の額面給与だけでは分からない、実際に受け取れる手取り額の違いを比較しやすくなります。
所得税の違い
タイでは、年間所得から各種控除を差し引いた課税所得をもとに、5~35%の累進課税制度が適用されます。日本の所得税率は5~45%であるため、特に高所得者の場合、タイの方が所得税負担が低くなるケースがあります。
また、タイでは一定の条件を満たす外国人を対象とした所得税の優遇制度もあります。BOI(タイ投資委員会)が運用するLTRビザ(Long-Term Resident Visa)の「Highly-Skilled Professionals」カテゴリーでは、要件を満たした対象者に対して、給与所得に一律17%の所得税率が適用される特例があります。
ただし、BOI認可企業に勤務しているだけで適用されるわけではなく、対象となる産業分野や職種、所得水準、実務経験など、LTRビザの要件を満たす必要があります。適用を検討する場合は、事前に対象条件を確認しておきましょう。
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タイと日本の手取り額シミュレーション
ケース1:独身・扶養なし(20~30代/月給25万円)
【条件】
※本シミュレーションは一定の条件に基づく概算です。実際の手取り額や税金、社会保険料、生活費等は、個人の状況や各種条件、為替レート、制度変更等により異なる場合があります。
バンコク・スクンビットエリアで一人暮らしをする場合、家賃・食費・光熱費・通信費・娯楽費を含めた生活費は、月35,000THB前後が一つの目安となります。
今回のシミュレーションでは、この生活費をもとに試算すると、手取り額と毎月の支出は以下のようになります。
つまり、毎月の手取り給与から生活費を支払った後、約14,269THBを貯蓄・自己投資・旅行などに充てることが可能です。
一人暮らしであれば、手取り額から生活費を差し引いても一定の余裕があるため、貯蓄や趣味、旅行などに資金を回しやすい水準といえるでしょう。タイでの転職を考える際は、額面給与だけでなく、実際の手取りと生活費のバランスも確認しておくことが大切です。
ケース2:夫婦(40~50代/月給48万円)
【条件】
※本シミュレーションは一定の条件に基づく概算です。実際の手取り額や税金、社会保険料、生活費等は、個人の状況や各種条件、為替レート、制度変更等により異なる場合があります。
夫婦二人がスクンビットエリアで暮らす場合、家賃・食費・光熱費・通信費・娯楽費を含めた生活費は、月80,000THB前後が一つの目安となります。
今回のシミュレーションでは、この生活費をもとに試算すると、手取り額と毎月の支出は以下のようになります。
つまり、毎月の手取り給与から生活費を支払った後、約10,050THBを貯蓄・自己投資・旅行などに充てることが可能です。
夫婦二人の場合は、手取り額に対する生活費の割合が一人暮らしより高くなるため、生活費を支払った後の余裕は小さくなります。ただし、毎月一定額を貯蓄や自己投資、旅行などに充てることができる水準といえるでしょう。
タイでの転職を検討する際は、額面給与だけでなく、実際の手取り額と夫婦二人で必要となる生活費のバランスを確認することが重要です。
全ケースまとめ
以下は、今回のシミュレーション結果をもとに、日本とタイの手取り率をケース別に比較したものです。いずれのケースでも、タイの方が手取り率が高い結果となりました。
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まとめ
タイでは、日本と比べて社会保険料の上限が低く、住民税もないため、同じ額面給与でも手取り率が高くなる傾向があります。
今回のシミュレーションでは、
・独身(250,000円/約52,083THB) :タイの手取り率 約94.6%(日本との差 約15.7%)
・夫婦(480,000円/約100,000THB):タイの手取り率 約90.05%(日本との差 約12.45%)
という結果になりました。
ただし、実際の生活余力は給与額だけでなく、家賃・教育費・家族構成によって変わります。タイへの転職では、額面給与だけでなく、税金や控除後の「実際の手取り額」を確認することが重要です。
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