これだけ景気が悪くて、タイの失業率(2020年9月)は、2.1%なのか?
本日の記事は、タイの失業率についてとなります。
11月16日タイ国家統計局(NSO)によると2020年9月におけるタイの失業率は、2.1%と発表されました。
コロナショック前の1%前後と比べれば、高い水準とはなりますが、他国と比べれば、依然低い水準となっております。
タイの主要産業である観光業が大きな打撃を受ける中で、果たしてこちらの数字はタイの失業率の実態を示しているのでしょうか。
タイの失業率の推移
図:タイの失業率の推移(タイ労働省HPより、弊社作成)
タイの失業率の実態を把握するためには、まずタイの人口構成を見る必要があります。
タイの人口構成を見ると、タイにおける就労者数は、2019年末の段階で3,761万人(人口に占める割合は、54%)となっております。
一方、失業者は、36.7万人となっており、失業者数/就労人口数の式で失業率を計算すると1%(0.97%)となります(上記の図の2019年12月時点のものと合致)。
産業別・雇用形態別の就業者数
図:産業別及び雇用形態別の就労者数
タイの就業者の大半が、自営業・家族従業者
2019年におけるタイの就労者の数が、3,761万人となりますが、こちらの内訳を産業別及び雇用形態別に見ていきますと、タイにおける雇用の実態が分かります。
こちら産業別を見ていきますと、農業に従事しているのが、全体の31%(1,169万人)となっており、就業者に占める農業従事者の割合が高いです(日本3%)。
続いて、タイの就労者の内訳を雇用形態別に見ていくと、自営業者と無給の家族従業者で全体の47%(1,796万人)と過半を占めております。
自営業者・家族従業者が多い背景としては、多くの農業従事者が自営業または家族従業者としてカウントされていることに加え、
露店・タクシードライバー・フリーランサーなどが自営業としてカウントされる点になります。
自営業者の多くが働きたいときに働く、また、家族従業者は無給ということから、あまり失業という概念がなく、これらに従事する実際の失業者数を数えることが難しいです。
失業率の計算にはこれらの数字が分母の47%を占め、47%の数字を正しく数えることができないことから、失業率の実態を把握することが難しくなっています。
このような背景から、失業率の実態を把握するためには、正規社員の雇用者数を見ていく必要があります。
正規社員とは、社会保険に加入している一般企業に勤めている会社員となります。
こちらの数字の内訳・推移をタイ政府が月次ベースで発表しており、こちらの数字は信頼することができます。
次回のブログでは、社会保険に加入している正規社員数ベースで失業率の実態を説明できればと思います。